テクノロジーは未来の都市を持続的に発展させていく。その方法とは・・・

今後30年間で世界の人口増加は、ほぼ全て発展途上国の都市部で発生すると考えられている。 それと同時に、世界の食糧生産は、土地、水、エネルギーの限界によってますます制限されるようになる。 これらの制限は、気候変動と現在都市部に住む40億人にさらに20億人が追加されることによってさらに悪化するだろう。 一方、現在の発展途上国の都市食糧エコシステムは非効率的であり、未来の課題にはまったく対応しきれない。

 

これらの課題の組み合わせは、今後経済的および政治的に致命的な結果を招くだろう。  そのため都市の食糧エコシステムの新しい道が見出される必要がある。  しかし、どのような道があるだろうか?

 

新しいビジネスモデルと政府の政策をサポートする新しいテクノロジーは、今後数十年間、よりフレキシブルな都市の食料エコシステムを作り出すことができる。 これらのテクノロジー対応システムは、農村部や都市近郊(郊外地域)と、都市の生産者と消費者を持続的に結びつけ、全体的な食糧生産を増やし、新しいビジネスや仕事の機会を生み出すことを可能にする(図1)。

The Urban Food Value Chain Davies Garett

図1: 都市型食料バリューチェーンは、農村部、郊外および都市部の生産者から、都市および周辺都市市場のエンドユーザーにサービスを提供する要となる。 ここでは将来的にこのシステムが都市に与える変化を垣間見ることができる。

 

このテクノロジー連携都市型食糧エコシステムは、小規模農家が自給農業から商業作物や鶏肉、魚、豚肉、昆虫などの動物性タンパク質の商業的生産へ移行し、幅広い市場に進出する膨大な機会を作り出す。

 

一方、都市内では、垂直型農場( vertical farms )などの制御された環境の農業システムの構築、植物ベースの3Dプリンティング食品や培養肉( cultured meat )の生産などの新たな機会が現れる。 食品の生産と流通の円滑化がボトルネックを解消し、新しいビジネスチャンスと雇用を生み出す。 このような既製品精密農業技術は、小規模農家から大規模生産者に至るまで、ますます新たな基準となる。

 

これらはすべて、農業革命4.0の一環として、デジタルプラットフォーム、クラウド、IoTなどと繋がり、これにAIが加わることによって、より大きな共同経済社会として統合される。 食糧、水、エネルギー、栄養、人間の健康をつなげるために、資源や人々が効率的かつ効果的に活用される。 さらには、経済的、自然的、社会的な資本を構築するために、廃棄物を最小限に抑え、リサイクルと再利用を最大限にするように設計された循環経済が発展するのを助けることにもなる。

 

つまり、テクノロジーは都市での生産拡大から、より効率的で包括的な流通、農村部の農家と都市とのより緊密なつながりに至るまで、都市の食糧エコシステムを変化させる。 これからの都市に役立つ7つのテクノロジー主導のトレンドを詳しく見てみよう。

 

  1. 世界規模でのつながり:情報、教育、市場

 

単純な携帯電話のSMS通信からインターネット対応のスマートフォンやクラウドサービスへの接続は、ますます強力になるテクノロジーによって新しい農業革命を発展させるプラットフォームを提供する。 現在インターネット接続は、世界人口の約55%である40億人以上に達している。  その数は今後数年でさらに急速に増加するだろう。

 

これらの情報通信技術は、食料生産者と消費者を、ジャストインタイムデータや優れた農業実務の向上、モバイルマネーとクレジット、テレコミュニケーション、市場情報、仕入れ、そして透明化とバリューチェーンを通したモノとサービスのトレーサビリティで繋げている。

モバイルデバイスのテキストメッセージは、小規模農家がワンストップで注文したり、収益性を高めるために、最適な管理方法の技術情報を入手したり、市場情報にアクセスできるようにしてきた。

 

例えば、ガーナのHershey’s CocoaLinkは、ココア業界の専門家や小規模農家の生産者と、テキストメッセージやボイスメッセージを使用している。 アジアとアフリカのDigital Greenは、テクノロジーを活用したコミュニケーション・システムであり、自国のコミュニティで成功した農民を撮影し記録することにより、小規模農家に必要な農業技術および管理方法を自国語で提供する。 MFarmはケニアの農家と都市市場をテキストメッセージでつなぐモバイルアプリケーションである。

 

 

  1. ブロックチェーンテクノロジー:基本的な金融サービスへのアクセス拡大と食品安全の強化

 

信用へのアクセスと金融取引は、小規模農家にとって継続的に制約となっている。  そこでブロックチェーンは、銀行を介さない基本的な金融サービスへのアクセスを支援する。

 

ゲイツ財団は、ソフトウェア開発者や銀行、金融サービスプロバイダが安全なデジタル決済プラットフォームを大規模に構築できるオープンソースプラットフォーム「Mojaloop」をリリースした。 Mojaloopソフトウェアは、より安全なブロックチェーン技術を使用して、発展途上国の都市の食品業者がビジネスや取引を行うことを可能にする。 この無料ソフトウェアは、小規模農家を顧客、業者、銀行、モバイルマネー・プロバイダーと連携する支払いプラットフォームを構築する際の複雑さとコストを削減する。 このようなデジタル金融サービスは、発展途上国の小規模農家が既存の銀行を利用せずに事業を行うことを可能にする。

 

ブロックチェーンは、生産、収穫、出荷、加工、および消費者への配送中の食品規制および消費者の要望を満たすための透明性の維持およびトレーサビリティにとっても重要である。 ブロックチェーンとRFID技術を組み合わせることで、食品の安全性が向上する。

 

 

  1. ウーバライズド(Uberized) サービス:オンデマンド機器、ストレージなど

 

ウーバライズドサービス は、農村部から郊外の都市の食糧生産と流通まで、幅広い都市の食糧エコシステムをさらに進化させることができる。 UberとAirbnbは乗り物や住居の共有を可能にするが、そのビジネスモデルは農業機械や貯蔵スペースなどの高価な機器のオンデマンド使用のように発展途上国で応用することができる。

 

これは、植栽・収穫機器(Hello Tractor)、輸送車両、腐敗しやすい製品の一時保管用冷凍設備の共有化や、新鮮な食品を生産し都市部の消費者に宅配する「クラウドキッチン」(ナイジェリアのEasyAppetite、ルワンダのFoodCourt、インドのSwiggy and Zomto)など、バイクや携帯電話を持つ若者が起業家や請負業者になり、都市の顧客に食料を提供することを可能にする。

 

もう一つのウーバライズドサービスは、食品廃棄物を減らすために「見た目の悪い食品」または規格外農産物を販売し配布することである。 世界の食糧のおよそ3分の1は、しばしばその見た目の悪さのために廃棄されている。  これは20億人を養うのに十分な量である。 このようなサービスは、形状やサイズが不良なために通常は廃棄されてしまうものを、安価で、栄養価が高く、美味しく、健康的な果物や野菜として消費者に提供する。

 

 

  1. 都市における植物由来食品の製造技術

 

私たちは、教育とマーケティングを通して、おいしい植物由来の代替品を開発し、食生活の選択肢を変える必要に迫られている。 これは環境への持続的影響に重要なだけでなく、新たなビジネスやサービスの機会を与えてくれる。 現在の食肉産業生産システムは、自動車産業に比べても環境への悪影響がはるかに大きい。 消費者の肉へのイメージを満足させる、Impossible Burgerや肉を超えるような植物由来の食品の開発は大きな進歩といえる。 赤身肉を食べることをあきらめるのではなく、テクノロジーは魅力的な植物由来の商品を創り出し、世界の赤身肉の消費を大幅に削減する可能性がある。

 

 

  1. 細胞培養、研究室産肉、3Dプリンティング食品

 

培養された細胞から生まれる(文字通りの)研究室産肉は、消費される都市を含め、タンパク質や食品がどこでどのように生産されるかを根本的に変えるかもしれない。 従来の畜産農場、肉屋で扱われていた肉の革新的な代替品が幅広く出現している。 この革新の歴史はシステムのボトルネックを取り除くことであり、肉ではそのボトルネックとなるのは「動物」である。 Memphis meatsが牛肉や鶏肉に関わる一方で、新興企業Finless Foodsは、例えば、フィッシュフィレを複製しようとしている。

 

3Dプリンティングおよび添加物製造技術は、プラスチック製のおもちゃ、人間の組織、航空機部品、建物などを製造するために応用可能な「汎用技術」である。 3Dプリンティング技術は、藻類、ビートの葉、または昆虫由来のタンパク質などの代替成分を、家庭用キッチン内の小型で安価なプリンタによって、美味しく健康な食品に変換するためにも使用することができる。 その食品は、個々の健康ニーズと好みに合わせてカスタマイズすることができる。

また、3Dプリンティングは、トラクター、ポンプなどの発展途上国では必要不可欠なオンデマンド交換部品を作成することで、食品供給システムに貢献する。 Catapult Design 3Dは、インド市場向けのトラクター交換部品、コーン皮むき機、カートデザイン、人工義肢、圧延水バレルをプリンティングしている。

 

 

  1. Alt Farming:都市部で食糧を生産する垂直農場(vertical farming

 

都市の食糧エコシステムの生産システムは、田畑で作られた農作物だけでなく、都市内での食糧生産にも依存する。 「制御された農業環境」を使用した新しい代替生産システムである。 これらには、安価で保護されたビニールハウス、温室、屋上菜園や袋式もしくはコンテナガーデン、人工照明を使用した建物内の垂直栽培が含まれる。 垂直農場は、天候に左右されず、作物の品質と生産性に影響を及ぼす土壌条件の悪化を心配することなく、様々な作物の年間生産を可能にするため、将来的な気候変動に対応するためにますます重要になる。 AeroFarmsは、通常の田畑での生産より平方フィート当たり390倍の生産性に値すると発表している。

 

  1. 農業の持続的強化のためのバイオテクノロジーとナノテクノロジー

 

CRISPRは、GMO(遺伝子組み換え作物)に関する社会的な懸念を回避しながら作物の生産性を向上させる有益な遺伝子書き換え技術である。 CRISPRは、気候変動への耐性および耐病性、収穫量の向上、栄養価の高い作物および動物を開発することで従来の育種および選択プログラムを加速させる。

 

ナノテクノロジーで開発された植物由来のコーティング素材は、廃棄物を削減し、果物と野菜の貯蔵寿命と輸送性を向上させ、適切な冷蔵技術を持たない発展途上国で収穫後の作物の廃棄を大幅に減らすことができる。 ナノテクノロジーは、種子をコートするポリマーにも使用され、種子自体の貯蔵寿命を延ばし、ニッチな価値の高い作物の発芽成功と生産を増やす。

 

 

すべてのテクノロジーをひとつに

 

次世代の「都市型食品産業」は、デジタルプラットフォーム、クラウド、インターネットによって結ばれるより巨大な協調経済の一部となるだろう。 テクノロジーが可能にする都市の食糧エコシステムは、新しいビジネスモデルとスマート農業政策が合わさることで、急速に成長する世界の都市人口を養うために持続可能な農業の強化(省労力でより多くの利益を出す農業)の機会を提供し、それと同時に 都市部、都市部の生産者、バリューチェーンの業者たちに新たな経済的機会も与えることを可能にする。

 

出典:Tech Can Sustainably Feed Developing World Cities of the Future. Here’s How

執筆: Fred Davies Banning Garrett

画像クレジット: Akarawut / Shutterstock.com